沼沢イズム
File01:プロユースカスタムクラブのインタビュー
——— 沼沢さんがプロのクラブを作っていた時代に、そのクラブで優勝するプロが次々に出ていましたが、なぜプロ達は沼沢さんのクラブを好んで使っていたのでしょうか。
沼沢 一言で言うと、私のクラブに「答え」があるということでしょうか。プロたちが自分のゴルフ、スイングに疑問を持ったときに「答えてあげる」。
あるいは逆にベストのスイングができているとき、優れたプロゴルファーは、より以上のゴルフを目指して新たな出発をするものですが、そういうときに、私のクラブが彼らの努力と一体となって答えを創り上げていくことができるからだと思います。
——— クラブは物理的機能はもちろん、それ以上の要素も大きいわけですね。
沼沢 プロゴルファーたちはとことんまでゴルフを追求している。
それは同時に自分を極限まで追求していくことでもあります。
理想のスイングが、理想の球筋をイメージし、試行錯誤をくり返しながら自分の信じた方法で限りなくそれに近づこうとしているわけです。その過程、通り道に沼沢のクラブがあるということではないでしょうか。
——— つまり、そういうプロの思いをクラブにフィードバッグさせていくわけですね。
沼沢 その通りなんですが、その時その場でのプロの声をいくら聞いても、そのままでは形になりません。問題はそのプロが何を目指しているかなんです。その最終的な目標地点までこちらで読み取ってあげることです。それができて初めてデザインコンセプトが見えてくるのです。
——— クラブでプロたちをリードしていくわけですね。
沼沢 リードするということにより一体化する。ただし、あくまでも客観的に冷静に見てあげることを忘れてはいけない。という点でリードする感じが出るかもしれません。
ただ、そうやって作ってもクラブには「終わり」というものがない。
一本作ったら、そこが出発点になる。その時点で次のものが見えてこなければならないのです。
そしてまた新たな出発…そのくり返しですね。
——— ゴルフが進歩していくと、それに伴ってスイングも変わっていく。そのあたりも見極めながらクラブを作らなければならないのですね。
File02:日経ビジネス 2003年11月17日号掲載
ひと烈伝 沼沢雄二氏[ゴルフクラブデザイナー] 人生を支える塊のクラブ より抜粋
9月に通算29勝目を上げた倉本昌弘もジュニアの頃から沼沢のクラブ愛用者の一人だ。
「29戦中25勝は沼沢さんのクラブだった。
彼のクラブがなければ自分がゴルフ界で名前を残すことはなかっただろう」と信頼は絶大だ。
プロゴルファー以外にも、沼沢の顧客にはゴルフ好きの財界人や政治家らが名前を連ねる。
ソニーの会長兼CEO(最高経営責任者) 出井伸之も顧客の1人だ。
飛距離にこだわる出井は、沼沢のクラブを試して1回で気に入ってしまった。
それ以来、飛距離競争では必ず沼沢のクラブを使う。
「見た目にも美しいので、使わない時は飾ってある」と言い、クラブマニアの出井の中でも特別な思い入れがあることが分がる。
◆ 一人ひとりの感性に合わせて、その人の力を最大限発揮させる沼沢はプロの間でも評判になり、一躍トップデザイナーとなった。「日本のプロゴルファーのほとんどが、彼のクラブを使っていた時代もある」 とゴルフジャーナリスト角田満弘は証言する。
◆ 映画監督の篠田正浩は、沼沢の養父を通じて沼沢と知り合った。
様々なクラブを試したが、アクセスと出合ってからは「浮気していない」と言う。
「クラブに対して信頼感を持てるのが一番の魅力だ」と言う。
◆ 倉本はこう話す。「沼沢さんに今、『クラブを作ってほしい』と頼んだとしても返事をしないだろう。『妻と一緒にゴルフを楽しめるクラブを作ってほしい』と言い直すと、『よし、分かった』と言うに違いない」、と。
File03:文藝春秋 2000年10月臨時増刊号掲載 ”ゴルフクラブ進化の行方”
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